★★★★★『スウィート・ノベンバー』(Sweet November)

 サンフランシスコの一流広告会社でクリエイティブ・ディレクターを務めるネルソン・モス(キアヌ・リーブス)は、成功の2文字しか頭にない仕事人間。恋人のアンジェリカからは「いつ両親に会ってくれる」と言われているが、それを疎ましく感じている。彼にとって、女はものでしかない。絶えず仕事に完璧を求める彼は、今日も忙しく働いていた。
 「免許更新の試験は?」、秘書に声をかけられる。そんな暇あるもんか!しかし、しなければいけないことは片付けなければならない。渋々行った免許センター。そこで彼は風変わりな女性と出会う。買い込んだ食料品を抱えてやってきた彼女は中身をこぼしてしまう。「そのサラミとってくれない!」。さて、試験の方だが、これがちょっと難解。周りを見ればせっせとやっている。ついさっきサラミを拾ってやった女に声をかける…それがいけなかった。試験官のひんしゅくを買った彼女は「30日後に」と言われて試験場から追い出されてしまったのだ。
 無事試験に合格して車に戻ると、その女がネルソンの車のボンネットに座っている。「ねえ、試験に受かった?」と聞く彼女。「そうか、運転できないんだな。仕事してるんだろう。交通費持つから、秘書に電話してくれ」と彼女に名刺を渡す。ところが彼女がつっかかってくる。「これは、悪いと思ったから?それとも車が大事だから?」。ため息をついて「車だよ」とネルソンは財布から金を出す。差し出された彼女は「許しを買うつもり?今日は許しは切り売りしてないわ」と返事。いつまでもこんな女につきあっている暇はない。ネルソンは「じゃあ、地獄を見る!」と車を出す。とにかく彼にとって今は、ディキシー社の仕事を取るのが最優先。
 ところが、マンションにいきなり彼女が現れた。彼女の名はサラ(シャーリーズ・セロン)。ドアマンのマニーを口で負かしたらしい。しかたがないとネルソンがロビーに降りていくと、いきなり「女を娼婦としか見ない男よ!あなたのせいで運転できないの。車に乗せて」と言い出す。彼が追い出そうとするが、「彼は露出狂よ」と騒ぎ立てるものだから、渋々車に乗せることに。
 ついたのはとある研究所の前。サラはいきなりカツラを被って変装する。驚いたネルソン「その格好は?」「強盗に入るの待ってて」と車のキーも取り上げられてしまう。彼女はバールでドアをこじ開けてなにやら抱えて出てくる。警報機が鳴り響く!「GO GO GO!!」。車を走らせたところで彼女も一安心「やった、大成功。映画みたい」「俺はごめんだ」。なんとそれは脳の実験をされかけていた犬だった。サラが質問を始める。仕事は?面白い?他に悩みは?趣味はないわね…。そして、彼女のアパートの前で彼女を降ろすと、「寄ってかない?」と声をかける。「十分興奮したから」とネルソンが言うと、「寄ってくれたら、二度と車を頼まないのに。いや?じゃあ、明日8時、お願いね」。こう言われると、さっさとサラと縁を切りたいネルソンは寄らざるをえなくなってしまう。
 部屋の中でサラが話しかける。「ネルソン、私の11月にならない?ここに1ヶ月一緒に暮らし、その間、一切仕事をしないの」。戸惑うネルソンに、さらに「力になるわ。私には問題を抱えた男を助ける能力があるの」と言う。ネルソンが「問題などない」と言ってみても、「それが第一。否認症よ。趣味もなく惨めって認めたでしょ」「認めてない」、「それにペットも飼ってない」「魚を飼ってるよ」、「残念だけど魚はペットじゃないわ」と言い負かされてしまう。そしてネルソンが「好奇心から聞くが、君みたいな変人に何ができるんだ?」「箱の中のあなたに光を当てるわ」、「そうかい、もう癒された気がするよ」と立ち去りかけると、「恋人はいないでしょ。あなたに恋のオーラを感じないわ」とサラ、「アンジェリカがいる」、「アンジェリカ…可哀想な人」。ネルソンは「もう嫌がらせも脅迫もなしだ。車にも乗せない。今度は警察を呼ぶぞ!」と車で走り去ってしまう。
 今日は、ディキシー社のプレゼンの日。ネルソンの弁舌がさえ渡るが、相手側は食傷気味。最後は「BB社に頼むことにする」と去ってしまう。興奮冷めやらないネルソンだが、社長からは「休みを取れ。永久休暇でも良いぞ」と言われてしまう。売り言葉に買い言葉で「これまで何度も賞をとっている男を切る余裕がこの会社にあるのか」と言ったものだから、社長も激怒して、ついに解雇されてしまう。
 ネルソンが部屋に戻ると、アンジェリカが荷物を抱えて出ていくところ、歯車はどこで狂ってしまったのか。目に付いたトロフィーを手で払い落とせば傷を負い…そこにマニーが「例のいかれた婦人から直接渡すようにと」と、荷物を持ってくる。中を開ければ『私の11月にならない?』とメッセージと鍵を携えた犬アーニーが入っていた。早速犬を抱えてサラを尋ねる。『考えてくれた?」とサラ、「放っといてくれ。君とつきあう気はない」。ふとサラがネルソンの手の傷に気づき「今日は何があったの?」と尋ねる。ネルソンは会社をクビになり、彼女にも振られたことを話す。「完璧!」と言うサラ、「1ヶ月ここに住んで君に洗脳されるのか?」。早速サラはネルソンの時計を取り上げ、シャツを脱がせる「子犬のおしっこくさいから」。
 ちょうど時計が0時をすぎる。「11月1日よ。私たちの11月」と言うサラの唇を求めるネルソン。応える彼女だが、早急に服を脱がせにかかるネルソンに「ゆっくり、やさしく、目を見て」と声をかける。カッとなって部屋を出ていくネルソン。それを追うサラ。雨の中、ネルソンは「人生最悪の日だ。女の抱き方まで指図するな!」、「助けないの」「いらない。それで君に何の得があるんだ」「奉仕よ」「理解できない」、「成り行きでいいの。行かないで」「何故」「いたいんでしょ」。部屋に戻った2人は雨で濡れた互いの体を確かめ合うように…
 翌日、ネルソンが目を覚ますと、そこにサラの姿はない。ネルソンは早速パートナーだったビンス(グレッグ・ジャーマン)に携帯電話をかける。広告界に復帰した重鎮エドガー・プライスとアポを取ろうと言うのだ。
 ちょうどそこにサラが戻ってくる。「今してたことをやめて!あなたが毎日していたことだから」。そして、彼女はネルソンの服は人に上げたと言い、代わりのパーカーを渡すのだった。プランター代わりにしたテレビ、犬と一緒の暮らし、今までとは全く違った生活が始まるのか…とネルソンが思った矢先、一人の男(ジェイソン・アイザックス)がやってくる。「11月?よろしくチャズだ。お気に入りのパーカーだが、あげるよ。似合うよ。10月より断然クールだ。じゃあね」。「やっぱり11月になるのはやめだ。さっきのはヒモか!」と通りに出ると、ネルソンの服を着た浮浪者、本屋や食料品店のおばさん、そして、片足立ち30時間の世界記録に挑戦しようという変わった少年アブナー(リーアム・エイキン)に紹介される。「街中の男と寝たんだろう!」と怒るネルソン。「あなたの100%よ」とサラ、「僕は忙しいんだ。タイム・イズ・マネーだ」「傲慢ね。あなたは失業者。戻るところはないわ」「奉仕は男をつる口実じゃないのか」。さらがムッとしてしまうと、狼狽えたネルソン、「ごめん。目的が理解できなくて」「事情があるの。まだ友達ね、あれをくれたら許してあげる」「あれ?」「時間よ」「1日ならOKさ」と結局つきあうことになる。一緒に海岸に犬を散歩に連れて行く。サラはかつてトップ・ペット社の社長だったが、今は趣味でペットとつきあっていると言う。そして、サラの部屋でサラがマフラーでネルソンに目隠しをして、目隠し鬼を楽しみ、一緒に夕食を。ネルソンが聞く「今夜別れる時、泣いたりしないよね」「もちろんよ。あのチャズが10月。あんなシャイな人初めて。自信をつけさせてあげたかったの。治療が効き過ぎて10月が終わる前に別れたんだけどね」、「9月は?」「なし、「君の男はなぜ…つまり、1ヶ月?」「十分な思い出を作れるし、綺麗に別れられるから」。
 食事を終え、食器洗いが嫌いなサラの代わりにネルソンが片づけをする。さらが声をかける「帰って何をする?テレビをつけて飽きる。パソコンをつけて仕事に飽きる。そして私を思い出すの…」。
 マンションに戻ったネルソンはまさにサラの言うとおりの生活だった。そして、サラを思い出してパソコンでトップ・ペット社を検索すると、確かに彼女は姉と創業し、彼女が社長だった。すぐにサラの元に戻るネルソン「たまには間違ったことも言えよ。そうすれば俺の顔も立つ」。
 ネルソンとサラの生活が本格的に始まった。しかし、ネルソンは一方でビンスと連絡を取り、次の仕事を考えていた。
 出かける時には市電を使う彼女。それが掟だと言うので、「女王様になりたければ、レザー服を買いに行こう」とおどけてみせる。アブナーが参加したラジコンヨットレースでは、潜水艦のラジコンを持った少年に金をやって他のヨットを沈めさせて「いい子としたわね。でも逆効果よ。自分で障害を越えることを学ばなきゃ」とサラにたしなめられる。サラに「秘密の夢は?」と聞かれ、自分の父親が近所の笑いものになってたセールスマンでいつも食後は部屋にこもってドーナツ盤のを聞いていたこと、だから父親の逆になりたいと「歌手になろうと思った」ということを話す。
 そんなある日、ネルソンがサラとアブナーと一緒にパーラーにいたところ、偶然ビンスと出会う。連れの女性レキシーの名を忘れたビンスは「彼女の名を忘れても、俺が奢ってやっている限りついてくる」と言う。ビンスが「17日を忘れるな」と言って去った後、サラはネルソンに「彼を友達として信じる?たとえば怖い時」と尋ねる。「気づいたろ。危険を避けようとしている」と言う。そこでサラはネルソンの生家に一緒に行こうと言い出す、「怖くないでしょ。さあ」。誰も住まなくなって久しい家。二人で踊り始めるが、サラの足がネルソンを踏む。「僕は多才じゃないけどダンスは踊れる。君は酷い。リードさせて」。
 一緒に海岸を歩き、目隠し鬼を楽しむ。2人で一緒に風呂にも。隣のチャズに誘われて行ったホームパーティ。なんと女装のチャズは「チェリーよ」と名乗る。そこには女装のお友達も一緒。久しぶりにテレビをつけて見入るネルソンに、チャズが声をかける「このCM良いわ。チェックが臭いけど」「下らん作品さ」「ご謙遜を。これで賞を取ったんでしょ」「何故それを?」「昼は社会人よ」「チャズ・ワトリー?BB社の。じゃあ、俺のことも?」「知ってたわ」…。と、その時、電話が鳴る。サラが出て不機嫌に切る。サラの姉からのものだった。サラはチャズが姉と繋がっていたことに腹を立ててその場から出ていく。サラを追ったネルソン。事情を聞こうとするネルソンだが、彼女ははぐらかせてしまう。
 11月17日。ブライスに会いに行くネルソン。サラが止めるが「一生に一度のチャンスなんだ」と取り合わなかった。そして、会談はスムーズに運ばれていった。ブライスの前でかつての自信に満ちた自分を演じてみせるネルソン。ブライスが契約条件を提示しようとしたその時、ウェイトレスが水をこぼしてしまう。ブライスが「君はウェイトレスだろう。君の仕事はミスなくものを運ぶことじゃないのか。そんな簡単なこともできずに、良く生きているな!」と叱りとばす。かつての自分の姿をそこに見たネルソンは、自ら契約を放棄する。
 その頃、傷心のサラをチャズが慰めていた。「まだ2週間残っている。縛っておけば良かった」と言うサラ。「人は束縛できない。特に彼みたいな男は手強いよ」、「だから怖いの…」。一人道を歩くサラを、タクシーで戻ってきたネルソンが声をかける。「胡蝶蘭、君にそっくりだ」「決まったのね、最高の条件で」、「ああ、今すぐと言われて、断った」。そして、2人の11月は続く…
 犬のアーニーが養子に貰われていく。「新しいのが来れば忘れるわ」とそっけないサラだが、見送りはネルソンに任せる。そこにいたアブナーと父親参観日には出席するという約束をして、道にたたずんでいたネルソンは、ある決意をもってサラの元へ行く。「結婚しよう。通りに立って考えたんだ」と携帯電話も時計も捨ててしまうネルソン。しかし、「無理よ」と洗面所に入ったサラはそのまま吐いてくるしみ出す。「本当のことを教えてくれ!」彼女が鍵をかけていた戸棚を開けるネルソンが見たのは、痛み止めの山だった。「知られたくなかったのに!」。
 病院でチャズがネルソンに全ての秘密を明かしてくれた「彼女は非ホジキンリンパ腫、ガンの一種。治療は何の効果もなく、全身に転移してしまっている。彼女は幻想を糧に自らを保って生きている。家族が治療継続を望んだことで彼女は家族を捨てたんだ」。「分からない。あんなに人生を愛しているのに」と言うネルソン、チャズは「分かってないな。彼女は懸命に生きてるんだ。掟のおかげで彼女は自分を保って生きていられたんだ」と。
 病室に戻ると、彼女が目を覚ましていた。「捨てるつもりだった?」と聞くネルソンに、「あなたには幸せな私だけを見ていて欲しかった。ごめんなさい」とサラは言い、病院から連れて帰ってくれるように頼む。ネルソンは彼女を抱えて帰宅するが、医者にかかろうと勧めるネルソンに彼女は「私は大丈夫。でも、あなたにはここにいて欲しくない」と追い出すのだった。
 行き場をなくしてたたずむネルソンにアブナーが声をかける。「今日は参観日だよ」と。「出られない」と言うネルソン、「約束したのに」とアブナー…、2人はそのまま登校し、帰ってくる。彼女がいる部屋の窓の灯りを見て歩き出すネルソン。タクシーに乗っていても、部屋に戻っても、思い出すのは彼女のことばかり…
 一方、サラの病状は少し落ち着いて、チャズやアブナー、近所の人が集まって感謝祭のパーティを開くことになった。チャズと一緒に料理を作りながら話す。「楽しい感謝祭になるわよね」「楽しもう…。プロポーズされたのは初めてじゃなかったんだろう?」、「受けたのは、初めて」「受ければいいじゃない」、「深入りしすぎたわ」「君さえその気なら彼は戻ってくる。サラ、掟を破って良いんだ。人には思い通りにならないこともあるんだから」、「彼に地獄を見せる権利は私にはないわ」「君は君を愛する人を遠ざけてはいけない。最後の最後まで」。料理を前にして歓談をしていた時、突然窓からネルソンが「メリークリスマス」と飛び込んでくる。「感謝祭でしょ」とサラ。「君にとってはクリスマスさ」とネルソン。チャドが気を回して皆を遠ざける。そしてネルソンは、サラに12のプレゼントをする。『高級サラミ』『虹色のカツラ』『サラというなの特注香水』『毛深いハリエット(女装趣味の友人とつきあう法)』『バブルバス』『市電のチケット100枚』『ムードミュージック』『ダンスの教本』『食器洗い機』『アーニー』、そして、『ネルソンの歌』と『11月のカレンダーで埋め尽くした部屋』。「毎日が11月だよ。毎日愛している。僕らの月は終わらない」と言うネルソン。「運命には逆らえないわ」「君を愛し幸せに…僕の欲しいのは11月、それだけ」。愛し合う2人…一つの夜を過ごす。
 朝、一人で出かけようとするサラ。気づいたネルソンが「どこへ?」と声をかける。「出かけてる間に荷造りをして出てって。2人の月は終わりよ」「僕は残る。サラ」。しかし、彼女は部屋を出て駆けだしていく。後を追うネルソン「僕を愛してるんだろう。人生は完璧じゃないんだ」「あなたの心に残る私を美しいままにしておきたいの」、「看病したいんだ」「大丈夫よ、実家に戻ることにしたから」、「君が欲しいンだ」「私は永遠にあなたのもの。だから行かせて…」「分かった…」。
 サラはマフラーでネルソンに目隠しをする。「愛してるわ、ネルソン・モス」「愛してる、サラ・デーヴァ」。互いの唇を重ね合う2人。そして、「忘れないで」と言い残し彼女は離れる。目隠しをしたまま彼女の方に歩き出す彼…でも、そこにはもう彼女の姿は…

 1ヶ月の恋。それを知った時、だいたいの設定が分かってしまい、展開も見え見えになったんだけど、そんなものは全く関係なく、彼女の生き様、思い、彼女を思う周囲の人の気持ちが胸にこみ上げてきて、見終わった時には潤んだ目と熱い吐息がそこにあった。そんなに素敵なラブ・ストーリーでした。
 12のプレゼントにしても、それぞれの人のセリフにしても、「ああ、これは、先にあったあれだな!なるほど」と納得させて暮れる部分も多くって、そんな楽しみ方もできる作品に仕上がっています。
 とにかく、良かったよぉぉぉ

2001/10/27 WMC高岡