★★★★『千と千尋の神隠し』

 お父さんの都合で転校することになった千尋(柊留美)。新しい家に向かっているのに、気分は晴れない。いよいよ新しい家と思ったら、お父さん(内藤剛志)が一本道を間違えてしまったから、大変。バックすれば良いものを、冒険心に火がついて、そのまま山道をつきすすむ。車がアウディ・クァトロだからって、揺れのひどいこと。
 進むだけ進んだら、道祖神があって行き止まり。その先にトンネルが続いている。風を吸い込むそのトンネルに、千尋は怖じ気づくのだが、お父さんの冒険心にかげりはない。お母さん(沢口靖子)までがその気になっていくものだから、千尋もついていくしかなかった。
 「テーマパークの残骸だよ」とお父さんが言うそこは、食べ物店ばかりが並ぶところ。その旨そうな匂いに誘われて、お父さんとお母さんが店に入っちゃった。店の人を呼んでも出てこないし、「人が来たら金払えば良い。大丈夫。金もカードもあるから」と、千尋が止めるのも聞かずにガツガツ食べ始めてしまう。
 あきれた千尋は、一人であたりを探検することに。奥へ奥へと進んでいくと、そこに「油屋」という風呂屋があった、煙突からは煙が出て、そこに続く橋の下を電車が走っていく…。その時、ハク(入野自由)という少年が「千尋!ここに来てはいけない。すぐ夜になる。川の向こうへ走れ」と慌てたように声をかけてきた。『なんで、私の名前を知ってるんだろう??』
 言われるまま、両親の元に走った千尋だが、彼女が見たのは豚になってしまった2人の姿だった。そして、町に灯りがともり、影がうごめき始める。川に向かって走る千尋。『これは夢だ!』と思った時、千尋の姿が消え始める。そして、船が接岸し、そこから神々が降り立つ。草むらにうずくまり、ただおののくばかりの千尋。彼女に声をかけたのは、またもやハクだった。「味方だ。この世界のものをたべなければ、そなたは消えてしまう。食べても豚にはならない」と無理矢理千尋の口に何かを放り込む。
 「きっと帰れるから」とハクに勇気づけられた千尋は油屋へ向かう。「橋を渡る間、息をしてはいけない」と言われるが、青蛙(我修院達也)の姿に驚き息を吐いてしまう。急いで油屋の庭に逃げ込むハクと千尋。
 「ここで生き残るため、釜場に行って釜爺(菅原文太)にここで働きたいとだけ言うんだ。この世界では働かないものは湯婆婆(夏木マリ)に動物にされる。相手は働かせないようにするが、働きたいとしか言ってはいけない」、ハクの言葉を信じて釜爺を訪ねた千尋だったが、手は足りてると相手をしてもらえない。それでも「ここで働かせてください」としか言わない千尋。彼女の足下をススワタリが石炭を運んでいたのだが、重さにつぶれるものがいる。それで千尋が助けてやったのだが、「手を出すなら、終いまでやれ!」と釜爺に言われ、高熱の釜に石炭を放り込む。それを見たススワタリたちが千尋に頼ろうとする。
 そこに釜爺の食事をもって、リン(玉井夕海)がやってきた。釜爺はリンに、千尋を自分の姪だと言い、湯婆婆のところに連れて行くように頼む。「自分の運をためしてこい」と送り出す釜爺。「おい、世話になった人だろ。挨拶くらいしな」とリンに叱られて、千尋も頭を下げる。
 リンに助けられて湯婆婆のところまでやってきた千尋は「ここで働かせて下さい」としか言わないが、湯婆婆は「ここは八百万の神様が疲れを癒すお湯屋なんだ。それをなんだい、お前の親は神様のための食事をばくばく食いやがって。お前も豚にしてやろうか、石炭という手もある」と脅す。それでも、千尋は「働かせて下さい」と言うばかり。千尋のその声に、湯婆婆の赤ちゃん、坊(神木隆之介)が泣き出したものだから、ついに湯婆婆も契約書を差し出す。「イヤだとか、帰りたいと言ったら、すぐに豚にしてやる」と言い、千尋の名を取り上げ「千」と名付けるのだった。
 そこへ姿を見せたのが、ハクだった。なれなれしい態度を見せる千尋に「無駄口をきくな。私のことはハク様と呼べ」と叱りつけるばかり。そして、リンの下で働くように命じる。リンにハラカケとキモノを渡され着替たものの、布団に入っても震えが止まらない千。
 明け方、ハクがやってきて、千に「お父さんに会わせてあげる」と声をかける。一緒に豚舎に出かける2人。草の上に座り、ハクから「これは隠しておきな」と千尋の服を渡す。そこには、転校の時に友達がくれたカード。「千尋が私の名前だ」と言う千に、「湯婆婆は名を奪って支配する。名を奪われると帰れなくなる。私は自分の名を思い出せない。でも、千尋の名は覚えていた」とハクは言うのだった。ハクからもらったおにぎりを千は涙を流しながら食べるのだった。
 廊下を掃除していた千が、ふと庭を見ると雨にたたずむ神様がいる。カオナシである。「そこ濡れませんか?ここあけておきますね」と優しく声をかけた千。カオナシはニコッとほほえんで油屋に入る。
 湯番の父役(上條恒彦)、兄役(小野武彦)は、人間である千が油屋で働くのが面白くない。それで千とリンに大湯場を任せる。薬湯で流すしかとれない汚れ。リンに言われて千は父役のところへ行くが、けんもほろろの態度。ふと、薬湯券が宙に浮かぶ。姿を消したカオナシの仕業だった。さっそく釜爺に券を送り薬湯に満たす。そこへカオナシがもっと薬湯券を持ってきて置いていく。
 そこへ、オクサレ様がやってきた。あまりの臭いに誰もが逃げ出し、食事はあっという間に腐ってしまう。その世話を湯婆婆は千に命じるのだった。カオナシの置いていった薬湯券でさらに薬湯をかけ、そして、オクサレ様に詰まった汚れを引っ張り出す。一緒に砂金までこぼれ出る。オクサレ様は河の神で、千にお礼のニガダンゴ(吐き下し)を渡す。
 大湯場に砂金のおこぼれに預かろうとやってきた青蛙に、カオナシが手から砂金を出しておびき寄せ食ってしまう。青蛙の声で話をし始めたカオナシ。次々と砂金を出して、料理を食い散らかし、どんどんどんどん巨大化していく。そして、手当たり次第に兄役までも食べてしまう。
 その頃、千は父母の姿を見つけられなくなった夢を見て驚いて目覚めす。そこに式神に追われたハクがやってくる。身体からは血を吐き出しながら、今にも死にそうなハク。千はハクを呼び入れ戸を締めて式神を追い払うが、一枚だけは千にくっついていた。一方、ハクは湯婆婆のところで、「もう使い物にならないから、片づける」と言われていた。ハクを助けたい一心の千は、坊の部屋に入り込むが、坊は「一緒に遊べ、行ったら泣くぞ」と脅すのだった。そんなものにかまっていられない千は、ハクを助けに湯婆婆の部屋に入る。その時、千にくっついていた式神が湯婆婆の姿になり、坊をネズミに、湯バードをハエに、頭を坊の姿に変えてしまう。なんと、それは、湯婆婆の双子の姉、銭婆だった。ハクが銭婆の魔女の印を盗んだと言うのだ。しかし、式の力もそこまでで消え、ハクは千ともども奈落へ落ちていく。千はハクにニガダンゴを食べさせて、ハクの腹を食い破るムシを潰し、銭婆の印を手にする。
 銭婆に印を返しに行こうと決めた千に、釜爺が電車の回数券を渡す。行きは良いが帰りの電車がないと言われ、「帰りは線路を歩いてくる」と千は言うのだった。釜爺はそこにハクに対する千の愛を感じる。
 すぐに出立しようとした千だったが、油屋内で暴れまくるカオナシが、千を求めているという。「千は何が欲しい?」と言うカオナシに「帰った方が良いよ。私の欲しいものはあなたには絶対出せない!」と言い切るのだった。そして、両親に渡すはずだったニガダンゴをカオナシに食べさせると、カオナシは激怒して千を追うが、「あなたはここにいてはだめ」と一緒に外に出る。すべてを吐き出し、元の大きさに戻ったカオナシは、前の気弱なカオナシになっていた。
 電車に乗り込んだ千は、カオナシも連れて行くことにする。そして、ネズミの坊とハエの湯バード。坊にとっては初めての外出。電車のはいよいよ6つ先の駅、銭婆がすむところへ。その頃,ハクが意識を回復していた。湯婆婆は千が逃げ出したものと激怒している。ハクは湯婆婆を訪ね、「まだ分かりませんか。大切なものがすり替わっていることを」と叱りつける。ようやく坊がいないことに気づく湯婆婆。「坊を連れ帰るから、千と両親を帰らせてやって欲しい」と湯婆婆と約束を取り付ける。
 千らを迎えた銭婆とは湯婆婆とそっくりだが、とても心根の優しい魔女。お茶を出して、一緒に手作りの服を作る。「魔法で作ったんじゃ、何にもならない。うまいね、助かるよ」。そこにハクが迎えにくる。銭婆はカオナシと暮らすことにして、皆を送り出す。
 ハクの背に乗って海を越えて油屋に向かう。ふと、千は気づいたことがあった。『そう自分が小さい頃川でおぼれたこと、その千を助けてくれたのが…』。「あなたの名前は琥珀川」と言う千、「そうだ、千尋。私はニギハヤミコハクヌシだ」と我が名を思い出す。
 油屋に戻ってきた千とハク、坊と湯バード。「湯婆婆様、約束です。千と両親を帰してやって下さい」とハク。坊も「婆のケチ。もうやめなよ。千を泣かしたら、婆嫌いになるからね」と言う。油屋の皆も千の幸せを願ってくれている。
 それでも、湯婆婆は最後の試練を与える。数頭の豚を用意し、「この中からお前の両親を選ぶんだ。チャンスは1回だ」と宣言する。それに千は「無理です。だってここにお父さんもお母さんもいないんだもん」と言い切る。「お前の勝ちだ!」と宣言する湯婆婆。そして、千は…

 10歳の女の子が、両親から離された異界で、自分のことしか考えられなかった子供から、人のことを思いやる心をもった人間へと成長していく様子を描いた作品である。
 「この世界のものを食べなければ消えてしまう」「橋を渡る時には息をしてはいけない」「どんなに否定されても、ここで働きたいとしか言ってはいけない」「名前を奪って支配する」「帰りは決して振り返るな」などなど、神代の国のまじないがたくさんでてきてて、楽しめた。
 そうそう、銭婆に「魔法で作っても何にもならない」と言わせたり、坊のことを「大切なものがすり替わっているのが、まだ分からないか」とか、自分でやることの大切さ、欲に目を曇らせてはいないかといった為になる話もでていたね。
 この「すり替わってる…」という話が、最後の千尋の親を見極めるという場面にもつながるし、そことオクサレ様が去った後の千が見た夢ともつながるんだよなぁ。

2001/7/20 WMC高岡