藤 娘   若紫に十返りの花を現す松の藤浪   人目せき笠塗笠しゃんと振りかたげたる一枝は     紫深き水道の水に 染めて嬉しき由縁のいろ   いとしとかいて藤の花 エゝしょんがいな   裾もほらほらしどけなく   鏡山 人のしがより此身のしがを   かえりみるめの汐なき海に 娘姿の恥かしや   男心の憎いのは 外の女子に神かけて   あわずと三井のかねごとも   堅い誓いの石山に身は空蝉のから崎や   待つ夜をよそに比良の雪解けて逢瀬のあた妬ましい   ようもの瀬田にわしゃ乗せられて   文も堅田のかた便り 心矢橋のかこちごと  (潮来又は藤音頭入る)   松を植えよなら有馬の里へ植ゑさんせ   何時までも 変わらぬ契りかいどり襖で   よれつもつれつまだ寝がたらぬ   宵寝枕のまだ寝が足らぬ藤に巻かれて寝とござる   アア何としょうどうしょうかいな   わしが小枕お手枕   空も霞の夕照に名残を惜しむ雁がね ─────────────────────────────── * 潮来の踊り  潮来出島の真菰の中に   菖蒲咲くとはしおらしい サアサよいやサア 宇治の柴船 早瀬を渡る わたしゃ君ゆえ のぼり船 サアサよいやサア                                            花はいろく五色に咲けど   主に見かえる花はない サアサよいやさ   花を一もと わすれて来たが 後で咲くや開くやら   サアサよいやサー よいやさ しなもなく   花にうかれて ひと踊り ─────────────────────────────── * 藤音頭の踊り  藤の花房色よく長く    可愛いがろとて酒買うて 飲ませたら   うちの男松に からんでしめて   てもさても 十返りという名のにくや   かへるという忌み言葉   はなものいわぬ ためしでも   しらぬそぶりは ならのきょう   松にすがるも すきずき                                            松をまとうも すきずき                                                                 好いて好かれて   はなれぬ仲は ときわぎの たち帰えらで   きみとわれとか おゝ嬉し おゝうれし ───────────────────────────────